2012年9月13日木曜日

9月10日の棚田調査

稲刈りが済んで秋の気配も漂う田んぼに10時前に到着した.

今回に気になったのは3つのため池の違い.生態系が全く異なる.

まず上の池は林の中に存在し,ミズニラ?など複数の植物が繁茂している.ここでは7月の調査でもイトトンボの羽化が確認されている.

真ん中の池はこれに比べると砂漠のようで,水の中を見ても何も生えていない.林から出たところに池がある.ただしこのような池は周囲の圃場整備をしたところでは多くみられる.降雨時に激しく水が撹拌されるため植物が繁茂しにくいのだろうか.水は土色に薄く濁っている.

下の池はジュンサイ,ヒルムシロなどが繁茂する.うちの水田にある小さな藻もいた.水の中は浮草の茎や根がジャングルとなっており,小さな生き物も捕食者から身を隠しやすそうである.ジュンサイ,ヒルムシロは貧栄養の環境に適応している.ヒルムシロは7月に可憐な花が咲いていた.そして今日もまだ咲いていた.なんと花期の長いこと.この池は水が流れ込むのではなく,湧いてくるのかもしれない.

畔刈りは7月はじめと9月上旬の稲刈り前のみの2回のようである.刈った草を片付けるわけでもない.水路のまわりは希少植物に配慮して草が残されている.

本日見かけたトンボはギンヤンマ.下の池では交尾したものが産卵していた.ギンヤンマというが羽元が鮮やかな緑色で尻尾にかけて褐色になる.メスは青っぽい.ホバリングが上手で角がとれた飛び方をする.ハグロトンボとおぼしきものが刈り跡の上を飛び回っていた.その他アキアカネ,シオカラトンボなど.天気が曇っていたせいか,あまり数は多くなかった.

池の違いがとても気になる.下の池のような環境は人工的に造れるのだろうか

2012年9月3日月曜日

地球生命圏-Jim E. Lovelock


ガイアの科学地球生命圏:Jim E. Lovelock 著者のLovelockは地球化学者であり,NASAの火星生命探査ミッションに参加することで,生命が存在する根拠を深く突き詰めることとなる.そこで得た仮説がガイア説となっている.化学的平衡から考えた場合に説明のつかない地球の大気の組成,海洋の塩分濃度,様々な生命起源の化合物や揮発ガスに思いを巡らせることで,そこに介在してる生命システムに何らかの恒常性を保つシステム,その集合体としてのガイアを発送している.科学的知見がまだ限られる時代に,ダイアログと探究心から生命を大胆にとらえようとしたその姿勢は今の科学者が失いつつあるものである.彼の仮説の多くはその後の研究により正しいと証明されている.30年後の地球科学の現状についても学びたいと思わせた. 以下備忘録.
バナール,シュレデインガー,ウィグナー
生命とは周囲の環境から物質あるいは自由エネルギーを取り入れることによって内的エントロピーを減少させ,その結果変衰した形の物質やエネルギーを排出する開放または持続システムの現象部類に属する.

現在の大気組成が安定状態の科学平衡から想像がつかないものである現実.メタン,酸化窒素,そして酸化大気中の窒素の存在さえも化学平衡から考えると極めて確率の低い事象.この大幅な非平衡が生物の活動によるものという仮説.

ガイア:地球の生物圏,大気圏,海洋そして土壌を含んだ1つの複合体.この惑星上において生命に最適な物理化学環境を追及するひとつのフィードバックシステム.

現在の地球のウラニウムは危険な放射性同位体元素U235を0.72%含む.このことから試算すると40億年前の地殻中のウラニウムは15%近いU235を含んでいたと考えられる.当時は酸素もオゾンも存在しなかったので,強烈な放射線と紫外線に地球はさらされていた.
惑星上の自由水素の存在量が酸化還元程度を決定する.酸化還元力とpHこそがひとつの惑星が生命にふさわしいかの二大環境要因である.火星も金星も自由水素をほとんど失っている.惑星の地表面上が極度に酸化しているため,決して生命を生み出すことができない.生命に必須の元素である水素が宇宙空間に逃げていくと,惑星は不毛になっていく.
過去35億年の間,地球の気候は安定していた.摂氏10度と20度の間であった.その間太陽のエネルギーは少なくとも30パーセント減少している.
初期の生命ロセスにはアンモニア,二酸化炭素,メタンが深く関与.アンモニアの温暖化効果によるコントロール.
生命の酵素活動に必要な微量元素類.これらが循環するシステム.
25億年前までに大気中の酸素が増加.地殻に含まれるすべての還元性物質は酸化されつくした.酸素の増加により大気中のアンモニア濃度が減少.
化学的平衡世界では大気の99パーセントを二酸化炭素が占め,アルゴンが1%となる.海洋の6#%を水が占め,残り35%を塩が占める.残り1.7%は硝酸ナトリウムである.
大気中の二酸化炭素濃度が1%を超えると地表の気温は沸点を超える.二酸化炭素濃度が下がれば加速度的冷凍化が生じる.
酸素レベルが25%を超えると濡れた草木も燃焼し始めたら止まらない.酸素濃度が12%に満たなかったら火が使えない.
対流圏は7マイル上空まで.大気の重さの1/3を占める.成層圏は高速で風が吹きながら成層化していて上下で交わることはない.成層圏では上にいくほど温度が高くなるので対流が起きない.紫外線は酸素を原子に分解し,酸素の再結合過程でオゾンが生成する.
メタンと酸素の関係.大気中に出たメタンの酸化に大量の酸素が消費される.メタン生産がないと,大気の酸素濃度は1万2千年で1パーセント上昇してしまう.
亜酸化窒素の二つの役目.酸素量調節と成層圏でのオゾンの調節.
アンモニア.降雨のpHを8に保つ働き.
海は重量で3.4%の無機塩類を含み,その90パーセントがNaclである.塩分が6%を超えると,生命活動は停止する.雨や河川によって海に流れ込む塩の量は8千万年ごとに現在の海洋塩分総量と等しくなる.
プランクトンの活動は日光のあたる海洋表層数百メートルに限られる.
珪藻類はオパールを骨格としている.オパールは二酸化ケイ素(シリカ)が宝石状になったもの.死んだ珪藻類の死骸は海底に堆積して堆積岩となる.海洋に流入するケイ素が増加すれば,珪藻は増加.減少すれば珪藻も減少.海中のケイ素は常に欠乏状態.珪藻が死ぬときに塩分も取り込んで沈殿するとすると,塩分コントロールの可能性.干潟がそうして形成されたシステムのとの仮説.
硫化ジメチル.硫黄サイクルを辿ると,陸上で分かっている全ての硫黄源からの流入よりも多い量の硫黄が河川を通じて海に供給されている.海水中の硫酸イオンから硫黄を抽出して硫化ジメチルに変える海藻,Polysiphonia fastigiata.硫化ジメチルは揮発性で芳香がある.
いわゆる汚染物質の多くは自然界に存在している(生物起源である).一酸化炭素はメタンの酸化により毎年10億トン発生している.二酸化硫黄,ジメチル水銀,ハロカーボンのいずれもが自然の出所をもっている.
地球における生態学的混乱が北半球の都市部で起きているという誤解.炭素サイクルが20パーセント,窒素サイクルが50%,硫黄サイクルは100パーセント以上も増加.最も大きな汚染源が人口密集地域であるという考えは,想像がしやすいが,農業地域こそがそこに当てはまる可能性.
ヨウ化メチルは海藻により海から陸へヨウ素が還元される媒体となる.
海洋農業により,海藻の生態系が単一化することの危険.
「死はアイデンティティの代償である」生物を見れば個体が死んでも種は継続していく.
ガイアの特質 1.すべての地球上生命にとって諸条件を最適にしようとする傾向.  それぞれの生物種は程度の差こそあれ,環境を修復して自らの繁殖率を最大にしようとするとする.ガイアはこれら個々の生物種の行動の集大成.
2.ガイアはその中核に重要器官をおさめ,消耗性および余分な器官は外周にある.人間の惑星へのインパクトはそれをどこで発生させるかに深く関係している.  北緯,南緯45度を超える地域は氷河期に現在の地球環境問題を遥かに上回る環境インパクトを受けながら地球の恒常性は失われなかった. ガイアの体内器官は地表ではなく,沼や湿地,大陸棚の泥の中に隠されている可能性.
3.ガイアの反応は,サイバネティックスの諸規則にのっとるが,中でも時間定数とループ・ゲインが重要.バランスが崩れてから改善されるまでに時間がかかり,その間慣性で状況がさらに悪化することがありうる.ホメオスタシスを超える破壊がなされた場合,バランスを取るのは人間の役割となる.
社会が都市化していくにつれ,生物圏から都市の知恵袋に流れ込む情報は,地方の地域共同体,あるいは狩猟集落に流れ込む量に比べて減少した.
都会の科学者によるモデル操作の限界.現実の世界でじかに集められたという重要要素に欠けるきらい.
情報は力なり.
我々が生物学的な役割をはたして,家をかまえ,家族を養うことの報酬の一部には,根本的な満足感が含まれる.我々の本能の中にはまた,周囲の他の生命形態との関係において,最善の役割を認知するというプログラムも組み込まれているのかも知れない.この本能に従って行動すれば,正当と思われるものは同時に見た目もよく,われわれの美的感覚のもととなるさまざまな快感をひきおこすのかも知れない.人間の本能のうち,生存を促すもうひとつの可能性として考えられるのは,個人個人の美しさにおける適合性と均整にともなうものである.われわれの肉体は細胞の共同体として成り立っている.美もまたエントロピーの低下,不確実性の減少,そしてあいまいさの度合いの低減に結びついていることがわかる可能性.
地球の占有者としてではなく,世話役としての人間の位置づけ.