2009年12月23日水曜日

インドの紅茶

インドのお土産でスパイスとともに喜ばれるのが紅茶である.ダージリンやアッサムなどが有名である.コンノートプレイス界隈で紅茶屋を探そうとするといろいろな人間に捕まり,うまくいかない(地球の歩き方を見ても紅茶屋の正確な場所は地図に載っていない).

そんな中で日本人が好きな店(ならしい)がMittal Teas.建物の奥にあり分かりにくいが,地下鉄のBarakhambha Rd.駅の前の古いビル,Oxford Book Storeの隣にある. 倉庫みたいな店だが,定価販売で信用できる.テイスティングさせてもらうと200Rp/100gぐらいのダージリンが日本の喫茶店で出てくるような味だった.日本の問屋でのこのクラスのお茶の価格は約倍くらいだと思う.日本人は何でも味に結構敏感なので,インドでも比較的高級な紅茶の葉を輸入しているのだなと思った.

ビンテージと呼ばれるダージリンは高級ウーロン茶によく味が似ている.400-500Rpのものはなかなか日本では飲めない味だと思った.アッサムは結構濃く出るのでミルクティーに向いている.空港で見ると紅茶の値段は倍になっている.そうなると日本で買っても変わらないことになる.もっと安く大量に仕入れようと思うなら,スパイスと同じくKhari Baoli Rdに行くべきだろう.

インドのスパイス

Delhiにいるときにスパイスを買いに行った.Khari Baoli Rd, Chandni Chowk, New Delhiである.地下鉄の駅Chandni Chowkで降りると,そこは壮大な問屋街である.駅の周りは繊維関係が多いが,Chandi Chowkの奥の方へ進むと建設資材の問屋が多くなり,さらに行き止まりを南下すると次のChowri Bazar駅まで延々と問屋街である.Khari Baoli Rdは行き止まりを北上して西に入る通りである.ここは延々食材屋が並ぶ.ここを歩いていてもうっとおしい客引きは誰も来ない.下町堅気だから外国人を騙して小銭を儲けようという連中はリキシャーの運転手ぐらいだ.

買い物をしたスパイス屋さんは丁寧にすべての商品の値段を教えてくれた.参考のために記しておこう.この時点でのインドルピーは約2円である.

ターメリック 50Rp/250g
ナツメグ   50Rp/100g
クミン    40Rp/200g
コリアンダー 25Rp/250g
黒カルダモン 40Rp/100g
緑カルダモン 150Rp/150g
ガラムマサラ 150Rp/500g
クローブ   40Rp/100g
生姜パウダー 50Rp/100g
シナモン   20Rp/100g
Manice    100Rp/100g
サフラン   200Rp/少量
トウガラシ  35Rp/250g
黒胡椒    50Rp/200g

スパイスを見ても何がなんだか分からない人のためにサンプル画像.ただしひっくり返しただけなので順序には気をつけること.



2009年12月18日金曜日

日本辺境論:内田 樹

この本は本当に面白かった!読んで夢中になっていて電車を乗り過ごしたぐらいだ.内田氏は武道家らしく,話題の進め方に何とも言えない絶妙な間合いがあり,また自分も含めて俯瞰するような冷静さというかトボケ味がある.論だけでなく,その語り口の絶妙さに感激した.

私は16歳で2年間の海外生活から日本に帰国し,それから日本に対してはある種の違和感を常に感じながら,それを原動力として今も研究に取り組んでいる.「ある種の違和感」とは,「何を目指しているのかわからない(長期的視野を欠く)」国家や地方の姿であり,変わり身の早い人々の責任感の欠如であり,根本的には日本人が「何が正しいか」を考える姿勢を強く持たないことである.そういう自分も歴史について無学であるため,そのような日本人の振舞いの根本的理由をはかりかねていたのだが,本著は大胆にその辺りに対する論を展開しており,腑に落ちるところが多かった.そしてまた,私自身の「日本人的素質」が痛いほど読んでいて分かってしまうという点でも勉強になった.

以下備忘録

「どういうスケールで対象を見るか」という問いは,本来あらゆる知的活動の始点に立てられなければならないはずのものであります.

司馬遼太郎:自分の「可視範囲」を宣言していた.

問題は,先賢が肺腑から搾り出すようにして語った言葉を私たちが十分に内面化することなく,伝統として受け継ぐこともなく,ほとんど忘れ去ってしまって今日に至っているということです.

日本文化論が積層してそのクオリティがしだいに高まってゆくということが起きない.

日本文化というのはどこかに原型や祖形があるわけではなく,「日本文化とは何か?」というエンドレスの問いの形でしか存在しません.・・・・変化の仕方が変化しないというところに意味がある・・・「執拗低音」(丸山眞男).

「きょろきょろして新しいものを外なる世界に求める」態度こそまさしく日本人のふるまいの基本パターンです.

日本社会の基本原理・基本精神は,「理性から出発し,互いに独立した平等の個人」のそれではなく,「全体の中に和を以って存在し,・・・一体性を保つところの大和」であり(川島武宣)

主義主張,利害の異なる他者と遭遇したときの日本人はとりあえず「渾然たる一如一体」のアモルファスな,どろどろしたアマルガムを作ろうとします.

私たちは変化する.しかし変化の仕方は変化しない.・・・・集団としての自己同一性を保持するためにはそういう手だてしかなかったからです.
私たちの国は理念に基づいて作られたものではないからです.私たちには立ち返るべき初期設定がないのです.

他国との比較を通じてしか自国のめざすべき国家像を描けない.

自分より強大なものに対して屈託なく親密かつ無防備になってみようとする傾向は軍国主義者であることと少しも背馳しない.

私たちの時代でも,官僚や政治家や知識人たちの行為はその都度「絶対的価値体」との近接度によって制約されています.「何が正しいのか」を論理的に判断することよりも,「誰と親しくすればいいのか」を見極めることに専ら知的資源が供給されているということです.

ここではないどこか,外部のどこかに,世界の中心たる「絶対的価値体」がある.

「我々日本人の行き方として,自分の意見は意見,議論は議論といたししまして,国策がいやしくも決定せられました以上,われわれはその国策に従って努力するというのが我々に課された従来の習慣であり,また尊重せらるる行き方であります」(小磯国昭)

日本国の本体であるところの「国體」というのは他国に従属しても政体の根本理念が変わっても変わらないものとして観念されていたわけです.

「どこかからか起こって来たもの」が戦争の主因であるというスキームだけは変わることがありません.

「辺境」は「中華」の対概念であります.

2009年12月15日火曜日

Chairperson

会議や学会発表のChairpersonをするのは名誉のあることであるが,格好良くやるのは難しい.会場から収まりのつかない質問が出たときにどう対応するかでChairの資質が問われる.そういう意味で今回ICIDに出てみていろいろなChairのあり方があるので勉強になった.

論理的Chairperson
Agendaをしっかり読み上げ,進行もAgendaに沿って行なう.このような場合,不意の質問が出た場合はどうするか.まじめにAgendaや議事と照らし合わせて答えられることは答え,答えられないことは議事とは主旨が合わない旨を伝える.質問者に対して極めて丁寧な対応である.非常識な質問にもある意味誠意を持ってばか正直に答えることで,非常識を退ける方法である(鏡効果).しかし本当に非常識な人にはこの方法は通じない.

Topdown型Chairperson
インドで初めて見た方法.Chairから各発表者にまず質問を投げかける.会場からも一応質問を受け付ける.その後に各発表者に回答を求める.「答えられることは答え,答えられないことは答えなくていい」との条件つき.時間が極めて限られる場合は非常に有効な手立てであり,外乱に強い.しかしChairがよっぽど「自分は偉い」と信じていない限りできない方法である.勿論こういう手に出たときはChairが責任を持ってSessionの結語をする必要がある.

翻訳型Chairperson
発表や質問についてChairが簡単な感想や解釈を添えて潤滑を良くする方法.これもChairに賢者ぶりが問われるところであり,英語が上手くないと粋なことは言えないので,解釈しているようで却って場を混乱させるかもしれない.Newsで言うならNewsStationタイプ.変な質問が出たときもWitで柔らかくかわす.

国際会議ではしばらく論理的Chairを目指そう.質問する側としては,非ネイティブ系の多い中ではなるべく端的な質問をすべきだと思った.その方がお互い誤解が少ないからだ.沢山しゃべるのは南アジアの人々に任せておこう.

2009年12月12日土曜日

ウンチ

コンノートプレイスは靴に汚れをわざとつけておいて親切そうに靴磨きをしてぼったくる悪徳な連中がいる.昔親父からもその話は聞いていたし(30年位前),15年前にきたときもそんな話を聞いた.今回一緒に出張していたH氏.お店探しをしていたらそんな靴磨き屋にひっかかり,なすがままにしていたら1500RPS(三千円)吹っかけられたそうだ.最終的に200RPSで何とか話がついたが,悔しがっていた.いつ汚れが靴についたのか全く分からなかったそうだ.
 
「いやーいい土産話ができましたね」なんて笑ってその話を聞いてた翌日のこと.地下街などを散策して知らず知らずその危険地帯に踏み込んでいた.道を渡ろうと足を止めると,靴磨き屋が寄ってきた.Your shoes is dirty! と言われてふと下を見ると,ウンチが右足のつま先に綺麗に載っていた.予防策としてスニーカーをはいてきていたのだが,容赦なくウンチが載っている.隣から通りすがりを装った共犯者がIt's a goat shit!とか言っている.「コンノートプレイスにヤギなんかいるかよ!」と思いつつ,こちらは靴屋に「地獄に落ちろ」と悪態をついたのみであった.蹴ってやろうかと思ったが,ウンチが載せられている時点でこちらの負けであるのでやめた.

しょうがないのでホテルに戻って靴を洗った.本物のウンチである.靴屋も自分で磨かなくちゃならないのだから,「ウンチのようなもの」にしておけばいいものを,そこは本物である.そうなると原料が何か考えてしまう.1日に10人ぐらいカモがいるとして,原料は何だろう.悪いほうに考えがいく.くそ~.どこからウンチを飛ばしたのかと思ったが,そんな高度なことが可能な訳はない.道を渡るのできょろきょろしている隙に,拭く振りをしたときにペットリ付けたのだろう.メッシュのスニーカーなのでさっぱり綺麗にならない.金を払っても気分が悪いし,払わないでもいやな気分になる.そして警察に捕まっても申し開きしやすいという意味で本物に行き着くのだろう.

H氏の話を聞いたときも,まさか本物をつけてくるとは思わなかった.「靴磨き屋だったら綺麗に磨けないと気分が悪いだろうから,革靴を狙うはずだ.」そんな仮定があったわけだが,彼らは職人的な靴磨きではなく,単なるぼったくりだ.仮定を間違っていた時点で自分の負けである.次回は草履でいくことにしよう.

2009年12月7日月曜日

Delhi

Delhiを訪れたのは1995年以来である.まだ大学院生になったばかりのころ,乾燥地農業への強烈な憧れをもって,初めてのField Workを試みたのがインドである.一泊30-40ルピーの宿に泊まり,10ルピーの飯を食べてという生活だった.その当時のチャイ一杯は0.5~2ルピーだったように記憶している.3週間あちこち放浪して5万円ぐらいしか使わなかった.

今回はICIDへの参加ということで一泊6000ルピーの宿に泊まっている.インドも変わったが,自分も変わったな~とつくづく思う.昨日はなつかしのNew Delhi駅周辺を訪れてみた.空港についてから高級街までの道のりでインドは変わったなーと思ったが,この辺はあまり昔と変わらないというのが素直な感想.上野やアメ横が15年じゃ変わらないのと同じかもしれない.屋台のチャイは一杯5ルピーになっていた.ざっと物価は5倍ぐらいになったようだ.安宿もシングルは150ルピーに値上がりしているみたいだ.15年ぶりに飲んだチャイは涙が出るほどおいしかった.




2009年12月5日土曜日

動的平衡:福岡伸一


福岡さんの著書は初めて読んだ.素晴らしいサイエンス・インタープリテーションである.特に気に入ったのは偉大な科学的発見の背後にある数多くの失敗に対しての敬意だ.ご自身の経験も含め,失敗から学ぶことの多さをしっかり説明している.

以下備忘録

ルドルフ・シェーンハイマー:食物に含まれる分子が瞬く間に身体の構成分子になり,又次の瞬間には体外に出て行くことを,安定度同位体マーカーをつけたアミノ酸を研究で明らかにした.細胞を構成する物質は流転する.

記憶は神経の回路である:神経と神経の間にはペプチドが情報伝達に介在している.

体内時計:細胞分裂のタイミングや分派プログラムなどの時間経過はすべてタンパク質の分解と合成のサイクルによってコントロールされている.加齢ととともに新陳代謝は遅くなっていく.物理的時間の進行は一定なので,加齢とともに時間が過ぎるのは早くなる.
錯覚を生むメカニズム:幼児期,神経回路は四方八方に触手をのばして手当たり次第結合を作り出している.その後この回路をは刈り取られていく.よく使われる回路は太く強化され,使われない回路は消滅していく.脳の合目的性.

消化の意味するところ:タンパク質をアミノ酸に分解し,情報を消し去ること.他者の情報と自分の情報の衝突や干渉を避けること.

人間は考える管である:消化管には消化神経回路が発達しており,脳におけるのと同じ神経ペプチドが機能している.

生命活動とはアミノ酸の並べ替え:タンパク質の合成と分解との動的平衡が「生きていること」

ニューロン間の電気伝達の制御に化学物質が関与:グルタミン酸はその一種.

膵臓:トリプシン,アミラーゼ,リパーゼという消化酵素を分泌.食品からの必要摂取タンパク質と同じ60-70gが分泌され,最終的には自己消化する.

自然界はシグモイド・カーブ

太るメカニズム:脂肪細胞は毛細血管から余剰ブドウ糖を受け取り,脂肪に変換して貯蔵する.細胞膜がその量の制御を行なっている.その制御は膵臓での血中ブドウ糖濃度に応じたインシュリン分泌である.脂肪細胞の表面にはインシュリン・レセプターが存在する.

貯蓄時には一過的に血糖値が低下し,身体は同化モード,つまり副交感神経優位の眠い状態にはいる.外敵に襲われると殲滅される.どんなときにも血糖値を高く保ち,常に臨戦モードに身体を維持した集団は遺伝的糖尿病集団である.

食品の価格差には合理的な理由がある.消費期限が近い,保存のために添加剤が使われていて,長期間流通できる,などなど.

ハムやソーセージに入っているソルビン酸には細菌の増殖を防ぐ働きがあり,私たちの腸内細菌も制圧を受けてる.また増殖して戻ることはするが,身体に負荷がかかっている.負荷を与えない状態に比べれば長持ちしない.

食物の分子はそのまま私たちの身体の分子になる.それゆえに,もし食物の中に生物の構成要素以外のものが含まれていたなら,私たちの身体の動的平衡に負荷をかけることになる.

モンサント:除草剤ラウンドアップに耐性を持つ大豆の開発.

ES細胞:まだ効率よく細胞を作れるわけではない.

細胞の分化のきっかけ:各細胞は細胞表面の特殊なタンパク質を介した相互の情報交換によって分化が始まる.

欠落しているのは生命にとっての時間という概念である.タイミングとパーツは時間に沿って組織化され,それぞれの時点で何がどのように起きるかはたった一回の不可逆なものである.

2009年12月4日金曜日

水の不思議


神戸大で12月2,3日に開催されたWINPTech2009,Gerald Pollack教授(ワシントン大学)とVladimir Voeikov教授(モスクワ大学)の水に関する発表は目から鱗ですごく面白かった.

Pollack教授曰く,水は界面で非常に面白い挙動を示す.調べてみると講演のビデオがたくさんある.
http://video.google.com/videoplay?docid=3141706759379426815#

VoeikoV博士曰く,水に重炭酸塩が溶け込んだもの(地下水では一般的)は光子を発している.そのリズムは月の動きと関係しているのだそうだ.
http://korotkov.org/index.php?option=com_content&task=view&id=50

生命現象,エネルギー,いろいろな面で水に関して我々はまだまだ無知であるようだ.

お2人を招かれたツェンコバ先生に感謝!

2009年12月1日火曜日

紅葉

今日から師走である.
昨日は秋深い丹波を通って通勤した.
そして今朝.寝ぼけ頭に紅葉が蘇ってきた.

木は一本一本一生懸命生きていて,別に
綺麗に紅葉しようとなんぞ思っていないだろう.
ただ,そんな木たちが時節になると申し合わせた
かのごとく,連携(しているように見える)のが
紅葉であって,それを見て我々も単に「綺麗だな」
だけではなく,自分の人生に重ね合わせてみたりして
感動する.

そんなわけで生き物としての人間も感情としての
人間も,個別に一生懸命生きつつ,全体に季節感が
あって連携しているように見えるのがきっと
「綺麗な」生き方なのだろう.

地域共生-備忘録,今日からぼちぼち書いてみよう.