動的平衡の福岡伸一さんの訳本ということで読んでみた。PCRの発明により1993年にノーベル化学賞を受賞したキャリー・マリス博士の自伝というか随筆である。
キャリー博士は天真爛漫な天才であることを随所に感じさせてくれる。博士と呼ばれる人々は人間的にも尊敬されるべき良識的社会人であることを通常演じようとするが、キャリー博士は人生をEnjoyすること、生命の不思議を探求すること、自分の試論で世界を理解しようとすることに最重要価値を置いている裸の魂である。エイズの原因をHIVとする論を批判し、IPCCの温暖化研究を無駄とこき下ろす。再現検証可能なものこそが科学であるという潔いスタンスに立てば、Big Scienceへのこれらの批判も一つの論として正当であると納得させるものがある。アメリカにはこういう真の自由人を生み出すアカデミズムの土壌がある。そこがうらやましい。天才は勉強ができるのでなく、理解や創造のための勉強を愛するのだということを強く感じた。
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