2010年3月11日木曜日

病気にならない生き方:新谷弘美

病気にならない生き方:新谷弘美

最初に読んだのはこの本が出た2005年であった.再び読み返してみてもいい本である.ちなみに2冊目はあまり印象に残らない本だった.
新谷氏は内視鏡医である.30万件を超える診断から,食習慣,生活と胃腸相の関係の経験則を導き出し,独自の健康論を唱えている.経験則なので説得力がある.いろいろな説を引用しているので参考文献があるともっと良かった.1938年に出た「健康の輪」から60年以上を経て健康食の効果が胃腸を直接見ることができるようになった医師によって裏づけされた感がある.健康になりたければ,健康な人のまねをするのがよいことを教えてくれる.免疫革命と合わせて家庭の常備本にすれば日本の医療費は大いに削減されることになるだろう.


茶は体によいか?
お茶を沢山飲む人の胃腸相は悪い.お茶に含まれるタンニン酸にはタンパク質を凝固させる働きがる.粘膜が薄くなる委縮性変化が起きていることが多い.

マクガバン・レポート(1977年)
 膨れ上がった医療費問題から「国民栄養問題アメリカ上院特別委員会」が設立された.委員会のメンバーは世界中から食と健康に関する資料を集め,当時最高レベルの医学・栄養学の専門家とともに「病気が増えている原因」を研究・調査.
 高タンパク,高脂肪の食生活はよくないと結論.理想的な食事として定義されたのは,元禄時代以前の日本の食事.精白しない穀物を主食に,おかずは季節の野菜や海藻類,動物性たんぱく質は魚介類を少々.動物食は成長を早めるのに有効であるが,同時に老化を早める食事でもある.

肉食が腸相を悪くする理由
 食物繊維がなく,脂肪やコレステロールを大量に含んでいること.肉食を続けると,腸壁がどんどん厚く固くなる.これは植物繊維がないために,便の量が極端に少なくなり,その少ない便を排出するために腸が必要以上に蠕動しなければならないから.便を押し出すために腸内の圧力が高くなると,粘膜が押し出され,「憩室」と呼ばれるポケット状のくぼみができる.ここに停滞便がたまっていく.停滞便は毒素を出し,その部分の細胞に遺伝子変化を起こさせ,ポリープを作りだす.腸相の悪い人の多くが,子宮筋腫,高血圧,動脈硬化,心臓病,肥満,乳がん,前立腺ガン,糖尿病などのいわゆる「生活習慣病」を抱えている.

日本人の胃がんの発生率が高い理由
日本人の胃がん発生率はアメリカ人より10倍も高い.脂肪を摂る量が異なることも理由だが,消化酵素の量に大きな違いがあるのではないか.日本人は胃が痛くなるとすぐに胃酸を抑える胃薬を飲むが,これがよくない.胃は異物と接する前線なので強い酸性環境が必要.胃酸が抑えられると消化酵素を活性化させるペプシンや塩酸が不足し,消化不良を起こす.また十分な胃酸がないと,鉄やカルシウム,マグネシウムなどのミネラルの吸収が阻害される.胃の摘出手術を起こした人が貧血症状を呈するのはこれが理由.さらに胃酸を抑えると,腸内細菌のバランスが崩れ,免疫力が低下.胃酸が分泌が不十分だと消化酵素が活性化されず,食べ物は未消化のまま腸へ運ばれる.当然のごとく腐敗,異常発酵が起きる.

薬はすべて毒
薬は基本的にすべて「毒」.効果が早く表れる薬ほど毒性も高い.

健康のカギは酵素
 人間の体内で働いている酵素は5千種類以上あるといわれるが,酵素は体内で作られるものと外部から食物として取り込むものの2種類がある.体内で作られる酵素も,腸内細菌が作りだしていると言われるものが約3千種類ある.
 良い胃腸相をしている人たちに共通していたのは,酵素を含む新鮮な食物を多くとっていたこと.一方悪い胃腸相をしている人たちに共通していたのは,酵素を消費する生活習慣(たばこ,酒,大食,添加物の多い食物の摂取,ストレスの多い生活,医薬品の多様など)
 アメリカの酵素研究の第一人者であるエドワード・ハウエル博士は,生物がその一生の間に生産できる酵素の総量は決まっているという説を提唱している.現在酵素を作り出すことができるのは生命体だけである.発酵食品のように酵素を多く含む食物を人工的につくることはできるが,酵素そのものを人工的に合成し,作りだすことはできない.
新谷氏は特定の場所で特定の酵素が大量に消費されると,体の他の部分で必要な酵素が欠乏するという事実を確認した.どこかで大量の酵素を消費すると,体の恒常性を維持し,細胞の修復や神経系,ホルモン系,免疫系を正常に保つ酵素がその分不足するとう仮説.

抗がん剤の恐ろしさ
 抗がん剤はもっとも体にとって毒.抗がん剤は毒性の強い活性酸素を沢山作りだすことによってガン細胞を殺している.活性酸素が大量発生すると,人間の体は恒常性を維持するために,活性酸素を解毒するための酵素を生成する.

牛乳を飲むと骨が弱くなる?
 牛乳に含まれるカゼインは胃に入るとすぐに固まってしまい,消化が非常に悪い.ホモゲナイズ(脂肪の均質化)のために攪拌をすることにより乳脂肪分は過酸化脂質に変化する.これは活性酸素と同じように体に悪い.高温殺菌をすると牛乳の酵素は48-115度の間で分解する.市販の牛乳を母乳の代わりに子牛に与えると4ー5日で死んでしまう.
 牛乳を飲むと血中カルシウム濃度が急激に上昇する.体は血中のカルシウム濃度を通常に戻そうと,血中のカルシウムを腎臓から排出する.牛乳の摂取でカルシウムが過剰に排泄されてしまう皮肉.4大酪農国であるアメリカ,デンマーク,スウェーデン,フィンランドの各国で骨粗鬆症が多い.小魚などを通してカルシウム摂取をすると血中濃度の急上昇は起きない.

ヨーグルトを常食している人の腸相も決してよくない.
乳糖を消化する酵素「ラクターゼ」は年齢を経るとともに減少.乳糖の未消化が軽い下痢を起こさせ,便通が良くなったとの錯覚を生むのではないか?

You are what you eat

活性酸素を少なくする生活
活性酸素の中和のための酵素は「SuperOxide Dismutase」.しかしSODは40歳を過ぎた頃から生成量が急激に減少する.

酸化の進みやすい油
 食用油は昔圧搾法で抽出されていた.これは熱を加えない方法.だが熱を加えないだけに変質もしやすい.

酸化が進まないがもっと体に悪い油.
 現在では「溶剤抽出法」が用いられている.原料にヘキサンという溶剤を混合して加熱し,さらに溶剤のみを蒸発させるため,高温,高圧をかける.この方法で抽出された油は「トランス脂肪酸」という体に非常に悪い成分になる.
 トランス脂肪酸は自然界には存在しない油で,悪玉コレステロールを増やし,善玉コレステロールを減らすほか,ガン,高血圧,心臓疾患などの原因となる.
 マーガリンは常温で液体であるはず不飽和脂肪酸に水素を添加し,飽和脂肪酸に人工的に変えてある.マーガリンの原料がそもそもトランス脂肪酸を多量に含んでいるので体には良くない.マーガリンと同様に「ショートニング」もトランス脂肪酸を沢山含む.

必須脂肪酸の上手な摂取法
 不飽和脂肪酸の中に人間の体で合成できないものがある.リノール酸,リノレン酸,アラキドン酸などである.これらの不飽和脂肪酸はとても酸化しやすい.圧搾採取したオリーブオイルでも酸化は避けられない.
 これらの不飽和脂肪酸は魚に含まれるものが最も安定している.特にイワシやサバなどの青い魚にはDHA(ドコサヘキサエン酸),EPA(エイコサペンタン酸)といった良質な不飽和脂肪酸が多く含まれている.
 油はどのようなものであっても空気に触れればすぐに酸化を始める.だからできるだけ調理に油は使わない方がよい.
 人間に必要な油は人工的に摂取しなくても,脂肪分を含有した食品を摂ることで自然に摂取できる.穀物やナッツ,豆類,植物の種など油の原料となるものをそのまま食べること.

人間より体温の高い動物の肉は血を汚す
 動物性タンパク質は大量に摂りすぎると,胃腸で完全に分解がしきれず,腸内で腐敗して大量の毒素を生成する.その毒素とは,硫化水素,インドール,メタンガス,アンモニア,ヒスタミン,ニトロソアミンなど.これに加えてフリーラジカルも生成される.
 タンパク質は1日60gしか必要ない.現在の日本男子の1日のタンパク質摂取量は84gでアメリカ人に匹敵する.
 無駄なたんぱく質は消化酵素によってアミノ酸に分解され,アミノ酸は肝臓でされに分解されて血液に流れ込む.すると血液が酸性に傾くので,それを中和するために骨や歯から大量のカルシウムが引き出される.
 魚を過剰摂取しても腸に憩室ができるまで悪化はしない.その理由として脂肪の性質が異なることが考えられる.人間より体温の高い動物の油は体内に摂りこまれると凝固する.一方で体温の低い動物の脂肪は液化する.その違いかもしれない.

赤身の魚は酸化しやすい
 赤身の魚は鉄分を多く含むため,白身の魚より酸化しやすい.赤身の魚はミオグロビンを多く含む.ミオグロビンは酸素を蓄えることのできる球状タンパク質.無酸素運動をするために大事なものだが,酸素を蓄えることができるだけに酸化しやすい.

植物性85%動物性15%が理想の食事
 植物食でもタンパク質は十分摂れる.人間の腸ではタンパク質が消化酵素によりアミノ酸に分解され,腸壁で吸収されてからタンパク質が再合成される.人のタンパク質を構成するアミノ酸は約20種類あり,その中には人間の体内で合成できないものが8種類ある.リジン,メチオニン,トリプトファン,バリン,スレオニン,ロイシン,イソロイシン,フェニルアラニンでこれらを必須アミノ酸という.これら必須アミノ酸をすべて含んでいるのが動物性タンパク質.しかし植物性タンパク質にも多くの必須アミノ酸は含まれている.穀類,豆類,野菜類,キノコ類,果物,海藻にもアミノ酸は多く含まれている.

白米
 玄米は発芽する能力を持つ.そのための胚芽を取り除いた白米は多くの重要な栄養素を失っている.
 種の中には勝手に発芽しないよう抑制する酵素「トリプシン・インヒビター」が含まれているものがある.穀物や豆や芋を生で食べると害になるのは,この物質を中和するのに大量の酵素が必要となるから.トリプシン・インヒビターは熱を加えると分解する.
 
人間の歯はなぜ32本なのか
 人間の場合,肉を食べるための犬歯が4なのに対し,植物を食べる歯は門歯の8と臼歯の20を足した28になる.これは植物性85%動物性15%が理想の食事であることを意味していると考えられる.85%の植物食のうち50%は穀物,野菜や果物を35-40%とするとよい.また50%を占める穀物は生成していないものを選ぶ.

良く噛むことと小食は体によい
 人間の体は噛めば噛むほど唾液の分泌が活発になる.小食を心がけていると食べたものが綺麗に消化,吸収されるので,腸内での腐敗が防げる.

肉食動物はなぜ草食動物を食べるのか
 地球上にはさまざまな食性をもった動物がいるが,それらに共通するのは酵素を多く含んだ状態の食物を好むこと.肉食動物が肉しか食べないのは植物を分解する酵素を自らもっていないから.草食動物を狩ると肉食動物はまず内臓を先に食べる.これにより草食動物が胃腸で消化した植物と消化しつつある植物を食べている.

食事の1時間前に水を飲む
 食事の直前や最中に水を飲むと胃酸が薄まり,消化によくない.就寝時には胃を空にしたほうがよいのであまり好ましくない.よって以下のような飲み方がよい.
・起床時 500-750cc
・昼食の1時間前 500cc
・夕食の1時間前 500cc
 水は冷えたものを飲むと内臓を冷やすので酵素にとってもよくない.室温のもの,もしくは体温にちかいもの.

水はよきパートナー
 水は血管の中だけでなく,リンパ管の中でも活躍し,私たちの健康を守っている.人間の体のリンパ管システムは,血管を川に例えるなら,下水管のようなもの.皮下組織にある過剰水分やたんぱく質,老廃物などを浄化,濾過,濃縮したあと,血流に運び込む役割を果たす.リンパ管の中にはガンマグロブリンのような抗体やりぞチームなどの抗菌作用を持つ酵素も含まれえいる.これらが健全に機能するためによい水が絶対に必要.
 酸化還元電位では,酸化力が低く還元力の強い水がよい.酸化力の高い水は微生物などを死滅させるが,同時に細胞も傷つける.水道水には酸化力の高いものがある.
 水に含まれるミネラルの中で特に大切なのは,カルシウムとマグネシウム.そのバランスが大切である.カルシウムが過剰だと細胞内に蓄積することでカルシウムは高血圧や動脈硬化の原因となるが,マグネシウムが適度に含まれていると,これを防ぐことができる.

人間が生きていけるのは微生物のおかげ
 人間の腸内には300種類100兆個の腸内細菌が住みついている.かれらは私たちの生命力の源である酵素を作ってくれている.
 腸内にはいわゆる善玉菌と悪玉菌がいる.善玉菌はひとことで言えば抗酸化酵素を持っている.彼らは腸内でフリーラジカルが発生すると,自らが死んで体内の抗酸化酵素を出し,フリーラジカルを中和する.絨毛の間にいる乳酸菌は免疫システムが病原と戦う時に大量に発生させるフリーラジカルの除去に活躍する.
 悪玉菌は未消化物に対して異常発酵を促すものであるが,これは有害ガスの発生により腸を刺激して排泄を促していると考えることもでき,一概に悪とは決めつけられない.
 抗酸化作用をもたらす善玉菌を増やすことが酵素の生産につながるのであれば,酵素が沢山含まれる食物を摂ることが,善玉菌の繁殖を助けることとなる.

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