決算書はここだけ読め:前川修満
決算書は作ろうと思ったら細かいルールがあるので大変だが,読むにはポイントだけ抑えれば簡単という実用書である.「そばを食べるのが好きな人は必ずしもそばの作り方を知らなくてもよい」と著者は例えている.また決算書の話の起点を中世の商人におき,順を追って複雑化していく書式を説明してくれているので分かりやすい.就職活動にも地方の財務分析にも資産投資にも決算書を読み解く力は必要である.是非学生にも勧めよう.
お金の5つの要素
お金の集め方に関するもの
負債:将来返す約束で集めたお金のこと.
資本:会社のオーナーが出資してくれたお金のこと.
収益:会社が稼いで得たお金のこと.
お金の使い方に関するもの
資産:集めたお金のうち,経済的価値を失っていないもの.
費用:集めたお金のうち,経済的価値を失っているもの.
中世のT字フォーム(試算表)
右側に資金をどうやって集めたか(貸方)を記し,左側にその資金をどうやって使ったのか(借方)を示す.貸方と借方の金額は一致する.
現代でも構造は同じ
借方__________貸方
|
| 負債
資産 |____
|
_____| 資本
|____
|
費用 | 収益
__________|____
決算書を読むポイント
負債は小さく,資本や収益が大きいほどいい.
借方は資産が大きく,費用が小さいのがいい.
収益が費用よりも大きいこと.収益が費用より大きいことを黒字という.
決算書
この一年でいくら儲けたのか.
会社の財政状態はどうなっているのか.
決算の時,試算表は上(負債,資本,資産)と下(収益,費用)で切り離される.
上は「貸借対照表」,下は「損益計算書」になる.
損益計算書 (収益と費用の差は「利益」)として記述される
_____ _____ _____
| |
_____| 費用 |
| 収益 → _____| 収益
費用 | 利益 |
_____|_____ _____|_____
貸借対照表 (損益計算書で得た利益が資本に組み込まれる)
__________ ___________
| 負債 | 負債
|____ → |_____
資産 | 資産 |
| 資本 | 資本(+利益)
|____ |
_____| _____|_____
資本金は大きく二つから構成される
株主が会社に払い込んだ「資本および資本剰余金」
利益剰余金
貸借対照表の読み方
資産,負債,資本の大小を比較する.この際負債が小さく,資本が大きい方がよい.
損益計算書の読み方
収益は費用より大きくなくてはいけない
実際の貸借対照表の読み方
細かいところは見ない.
「資産合計」,「負債合計」,「純資産合計」(資本合計)をまず見る.
自己資本比率
資本の合計を資産の合計で割った値
資本(純資産)/資本(純資産)+負債
自己資本比率は40%以上だったら安定,20-40%だったら一般
瑣末な項目は面白半分に
負債は有利子負債の大小を見る.有利子負債は少ないほどいい.
資本金(純資産合計)は利益剰余金の大小を読む.
収益は3種類ある
売上高(その会社の主要な業務で稼いだもの)
営業外収益(その会社の主要な業務以外で稼いだもの,預金の金利など)
特別収益(突発的な収益,たとえばビルの売却など))
費用は5種類ある
営業費用:「売上原価」と「販売費及び一般管理費」から構成される.
営業外費用
特別損失
法人税
利益には5種類ある
売上総利益:売上高-売上原価
営業利益:売上総利益-販売及び一般管理費
経常利益:営業利益+営業外収益-営業外費用
税引前当期純利益:経常利益+特別収益-特別損失
当期純利益:税引前当期純利益-法人税
売上総利益率
売上総利益を売上高で割ったもの(%).粗利益の大きさを示す.
売上高営業利益率
営業利益を売上高で割ったもの(%).普通の企業は1ケタ.
特にここだけ読めばよいのでは
経常利益はトリッキーなので売上高,営業利益,当期純利益を見る.
比較をしないと面白くない
売上高の比較
営業利益の比較
事業年度ごとの比較
決算データの入手方法
EDINET http://info.edinet-fsa.go.jp
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